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『こいも』 日々思うあれこれ

あれこれ日々思うこと、考えることを、書いています。

 

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ワタミの介護 レストヴィラ赤塚 の 死亡事故について 


テレビや新聞などで、大きく報道されている『ワタミの介護』が運営する介護付有料老人ホーム 『レストヴィラ赤塚』での死亡事故。
当ブログは、高齢者住宅や介護施設の経営者、開設を検討されている方、また、そこで働く介護看護スタッフの方が多く読まれていると思いますので、『ひどい話だなぁ・・・』といった表面的なことではなく、今回の事故は何が問題なのか、そこから何を考えなければならないのか、私の考えを簡単に整理をしておきます。

高住経ネットでは、サ高住や有料老人ホームの評価基準の検討を進めています。高齢者住宅関連制度、介護保険制度が大混乱しているために、高齢者住宅は、あれもこれも『安心・快適』といったセールストークが展開されていますが、入居者・家族の高齢者住宅選びをサポートし、事業者の底上げを図るためには、経営実務・サービス実務に基づいた、明確で客観的な評価基準が必要です。
高齢者住宅のレベル・良し悪しはどこで判断するのか、これからの高齢者住宅経営のポイントとなるキーワードは3つあると考えています。

ひとつは、リスクマネジメント。
高齢者住宅の長期安定経営を阻害する要因(リスク)は、収支悪化・倒産などの経営リスクと、サービス上発生する介護事故や感染症などの業務上のリスクの二つに分かれます。
高齢者住宅は、高齢者の生活の根幹となる住宅事業ですから、長期的な経営の安定は不可欠です。
また、身体機能の低下した高齢者が対象ですから、転倒すれば骨折しますし、誤嚥・窒息などのリスクも高くなります。ノロウイルスやインフルエンザなどの集団感染の可能性は高く、重篤な状態になりやすいのがその特徴です。万一、火災や災害が発生すれば、自分で逃げ出すことはできませんから、多くの高齢者が死亡する大参事となります。高齢者住宅の特殊性に起因するこれらのリスクを正確に理解し、実務的な削減・予防・対応のノウハウを備えているのかは、高齢者住宅の資質・レベルをはかる重要なチェックポイントです。

二つ目は、ケアマネジメントです。
多くの人が勘違いしていますが、ケアマネジメントは、介護・看護サービスと同意ではありません。
それぞれの高齢者の生活ニーズ・生活環境から、どうすればその生活を支援できるか、生活の質(QOL)を向上させられるか、その人らしい人生をおくることができるるかを真剣に考え、それぞれの高齢者に合わせて介護サービスなど様々な社会資源を結び付けていくことです。
アセスメントからモニタリング、ケアカンファレンスを通じて、重度要介護状態になっても、それぞれの生活ニーズに合わせて適切な支援ができるシステムを構築しておかなければなりません。高齢者住宅に求められるのは、介護付・訪問介護の併設といった表面的な介護看護サービスではなく、質の高いケアマネジメントの能力とそのノウハウです。

最期のひとつは、ディスクロージャーです。
高齢者住宅は、介護看護スタッフや入居者が決まった閉鎖的な空間であり、一度入居してしまえば、入居者・家族が弱い立場に立たされやすいという特性も持っています。問題が露見しにくいため介護虐待や隠ぺいが発生する土壌が揃っていると言えます。入居者が安心して生活し、家族からの信頼を勝ち得るためには、徹底した情報の開示が必要となります。入居時説明、家族面談、ケアカンファレンスなどを通じて、家族・入居者からの意見を積極的に聞き、丁寧に説明するという仕組み・ノウハウが求められます。

この3つのチェックポイントに照らし合わせると、報道されていることが事実ならば、残念ながら当該事業者のレベル、法人の経営体質に対して、かなり厳しい評価をせざるを得ません。少し、揚げ足を取るようで申し訳ないのですが、事業者からのコメントを聞いて(報道が事実だとして)、いくつか気になることを指摘しておきます。


ひとつは、入浴介助の方法です。
当初、事業者は、家族に対して、
  『10分間、目を離した間に心肺停止になった。病死だ』と説明しています。
事業者はこれで問題がなかったと判断しているのかもしれませんが、真実そうであったも、この入浴介助の方法は適切なものではありません。入浴は、高齢者にとって身体的な負担が大きく、血圧の急激な上下を伴うことから心筋梗塞や脳出血、溺水などの可能性は高くなります。要介護高齢者であれば、入浴中は付き添う・目を離さないというのが基本です。リスクマネジメントの視点から策定した入浴介助マニュアルでは、『下着などの忘れ物も入浴担当スタッフが自分で取りに行かず、他のスタッフに持ってきてもらう』ということを推進しています。事故の発生を十分に予見できるのですから、10分ではなく1分の間に溺死したケースでも、裁判になれば確実に負けます。

事業者の責任にならない類似ケースを挙げろというのであれば、
 『入居者本人から10分は一人でゆっくり入浴したいので付き添うな・・』と言われ、
 『急変する可能性がありスタッフが付き添わないと危険だ・・』と何度説得しても聞き入れられず、家族も本人もリスクを理解し、納得の上で、異常があれば緊急コールを押してもらうなど十分に説明して、一人で入浴していただいていた・・という事例だけです。本当に、『入浴中10分間、目を離した間に心肺停止となった』ケースだとして、だから『事業者には責任ない。介助ミスではない』というのは、高齢者介護の事業者責任・リスクマネジメントの考え方が根本的に間違っています。
問題が発生したのは日中ですから、1時間半もの間、入浴させていて他のスタッフも誰も気が付かないというのは異常な気がします。この法人では、『入居者によっては、入浴中 いつも10分くらいは目を離している(浴室を離れている)』ということが常態化しているということでしょうか。


二つ目は、隠ぺい。
ご存じの通り、『10分間、目を離した間に心肺停止になった。病死だ』という当初の説明は偽りで、本当は、約1時間半の間、ケアをしていなかったことが分かっています。
人間、不利益な事象が発生すると人に知られたくない、隠したくなるという心理が働くことは事実です。ただ、介護業界だけでなく、すべての事業において隠ぺいがなぜいけないのか・・と言えば、『隠すのは悪いことだから』という倫理的なことではなく、確実に問題が悪化するからです。

もし仮に、当初の虚偽の説明で家族が納得されていたとしても、本当は何が起こっていたのか、事業者が家族に虚偽の説明をしたことをしたことを、全スタッフが知っているはずです。事業者・管理者みずからが不都合なことは隠してよい、ミスしてもわからなければ良いということを示しているのですから、スタッフもそれに倣うことになるでしょう。介助ミスやヒヤリハット報告など全く上がってきませんから、サービスの管理などとてもできません。今回の死亡事故は、単なる介助ミスではなく、重過失に相当する事例です。そのまま、何事もなかったように、『今度から気を付けてね・・』という程度で、当該スタッフも働き続ける予定だったのでしょうか。
今回、問題がマスコミに大きく取り上げられたことで、法人は『遺族には誠心誠意、対応させていただいている』とコメントされていますが、今回亡くなられた方の家族だけでなく、当該事業所だけでなく、他の事業所のスタッフ、他の入居者・家族からの信頼も大きく損ねることになりました。

今回の対応は、ディスクロージャーというよりも、基本的なコンプライアンスの意識が欠如していたと言わざるを得ません。『事故や急変を隠ぺいする事業者』『事業者の言うことは信頼できない』というイメージがつけば、『適切なサービスにおける避けられない事故』であったとしても、事故対応・トラブル対応は相当難しくなりますし、スタッフ募集、入居者募集に与える影響も計り知れません。


三点目は、『他の入居者対応で忙しかった』という言い訳。
確かに、介護付有料老人ホームと言っても、24時間一人のスタッフが一人の高齢者に付き添えるわけではありませんし、歩行中の転倒や誤嚥など、すべての介護事故を100%ゼロにすることは不可能です。
しかし、ここで考えなければならないのは、介護事故に対する介護付有料老人ホームの安全配慮義務、事業者責任は、スタッフ配置に関わらず同じレベルのものを求められるということです。つまり【3:1配置】で低価格の介護付有料老人ホームだから、転倒しても仕方ない、目を離していてもやむを得ない・・ということにはならないということです。『忙しかったから・・』『他の入居者の対応していた』というのは、実務的にはイメージできますが、法的には通らないのです。

最近は、低価格の高齢者住宅が増えていますが、その大半はスタッフがぎりぎりの状態で運営が行われています。『入浴介助時に付ききりになれない』という介護システムは、基本的な事業者責任が負えない、つまり商品として瑕疵があるということです。
ただ、今回のような1時間半も入浴中の高齢者をほっておかなければならないほど、忙しいと言うのは考えられません。もし、本当にそうなのであれば、この老人ホームでは、これまで同様の異常なレベルの介護サービスを提供してきた(されている)ということになります。


今回の死亡事故(介護事故と呼ぶならば・・)では、民事責任、刑事責任、行政責任、すべて問われることになります。高齢者住宅に対しては介護事故やトラブルが多発し、社会的にも厳しい視線が注がれています。この問題の背景には、入居者保護施策を無茶苦茶にしてきた厚労省に責任があることは間違いありません。ただ、TV広告なども積極的に行っている有名企業ですから、さすがの厚労省も、これまで同様の事例がなかったのか、厳しく調査・対応するでしょう。

今回の報道を受け、単独の小さな個人経営のような有料老人ホームやサ高住であれば、それほど驚かなかったと思いますが、多数の介護サービス事業所や有料老人ホームを経営する大手の有名法人で、本当にこのレベルなのか・・と愕然としました。

私は、事故の全体像を知りうる立場にありませんし、誰が隠ぺいしたのかわかりません。
一番の疑問は、入居者が入浴中に亡くなるという異常な事態でも、一歩間違えば、法人本体を揺るがすような大問題に発展するようなケースでも、各事業所任せで本部案件にならないのかということです。大きな有名企業ですから、優秀な顧問弁護士も控えているでしょうし、リスクマネジメントやケアマネジメントなどサービス向上・介護事故予防などを専門に担当するスタッフ・部署もあるでしょう。
隠ぺい体質がどれほど企業を腐らせていくか、雪印や三菱自動車がどれほどのダメージを受けたか、その後どうなったのか・・これまで学んできたはずです。
入居者が明らかな介助ミスによって死亡するという最悪の事態であるにもかかわらず、『10分間、目を離した間に心肺停止になった。病死だ』といった、あまりにも杜撰な対応や子供のようなバレバレの隠ぺいが平然と行われ、それに上層部が気が付かないような体質・システムだとすれば、法人そのものに大きな問題があると言わざるを得ません。

この問題は、対岸の火事ではなく、他山の石として、すべての介護施設・高齢者住宅で真剣に考えなければならない問題です。高齢者住宅に対する期待が高まるにしたがって、社会的に厳しい視線が注がれています。これまで、入居者・家族の視点に立って、真剣に真面目に取り組んできたとしても、介護事故やトラブルの発生時にその本質が問われることになります。『この程度で良いだろう』『ばれなければ良いだろう』という場当たり的で安易な対応をすれば、入居者、家族、地域、そしてスタッフからの信頼、すべて地に落ちることになります。

有料老人ホームやサ高住など社会的な関心が高まっていますが、家族や入居者は、誰もがウキウキ・ワクワクと高齢者住宅に入りたいわけではありません。家族と話をしていても、本当は『自分たちで介護できなくて申し訳ない』と思っている人も少なくありません。
今回の問題についても、ご家族は、本当に残念で無念だろうと思います。
事業者は、家族の代わりになれるわけでもなく、なる必要もないのですが、高齢者住宅・高齢者介護のプロとしてその思いを大切に受け取り、寄り添う努力を怠ってはいけないのです。

最初に述べたこれからの高齢者住宅経営の3つのキーワード
  『リスクマネジメント』 『ケアマネジメント』 『ディスクロージャー』のチェックポイントはそれぞれに違いますが、その中で目指すものは、『安全』と『信頼』に集約されていきます。
そのシステム・意識を作るのは現場スタッフの責任・仕事ではありません。経営者自らがこの問題を真剣に考え、取り組まないと、入居者を守ることも、スタッフを守ることも、事業を守ることもできないのです。


※このコラムは、あくまでも、現在(2012年1月12日)の報道をもとにして書かれています。
 事実が違う場合、また新しい事実が明らかになった場合、変更若しくは削除する可能性があります。



【関連コラム】 もう少し深く知りたい方はこちらもお読みください

    安心・快適の基礎となるもの
    介護事故とは何か ~介護事故の定義~  
    事業者の責任が問われる介護事故

    介護事故の予見可能性と結果回避義務 Ⅰ
    介護事故の予見可能性と結果回避義務 Ⅱ
    介護事故の予見可能性と結果回避義務 Ⅲ

    高齢者住宅におけるケアマネジメントの重要性
    ケアマネジメント と リスクマネジメント



category: 介護事故 事業者の法的責任

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