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『こいも』 日々思うあれこれ

あれこれ日々思うこと、考えることを、書いています。

 

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サ高住の課題と未来 ⑩ ~商品性Ⅱ~ 


東京都羽村市にある有料老人ホーム 『グリーン東京』が㈱メッセージに譲渡されたというニュースを聞きました。グリーン東京は、故滝上宗次郎さんが社長をされていた老舗の有料老人ホームです。

滝上さんは、橋本総理が進めた構造改革の中で、経済審議会『医療・福祉ワーキンググループ』の座長や行政改革委員会の参与などを務められ、平成9年には、日経ウイークリーの中で、日本を動かす12人の一人にも選出されています。著書をいただいたり、拙著をお渡ししたり、食事をさせていただいたり・・有料老人ホームの課題や未来について色々とお話しをお伺いし、大変勉強させていただきました。

しかし、2007年に54歳の若さで心筋梗塞で急死、『グリーン東京』はゼクスグループに売却されます。更にジャパンケアサービスに経営母体が変わり、今回メッセージさんが直接経営されるとのことです。
事業継承にあたって、メッセージさんは、『グリーン東京は業績が伸び悩んでおり、高齢者住宅運営に強みのある当社が運営を行った方が効率的と判断した』とのコメントを発表されています。
その通りなのだと思いますが、先代を知っている私としては、寂しさを感じるニュースです。この人が生きておられれば、オピニオンリーダーとして活躍されていれば、いまの高齢者住宅関連制度はもう少しまともなものになっていただろうと思うと、とても残念です。





この数年のうちに高齢者住宅業界は、大きな転機を迎えます。『高齢者住宅の需要は高まる』『高齢者住宅は儲かる』 という過剰な期待によって激増してきた有料老人ホーム、高専賃、サ高住は、バブル期の『土地神話』と同じです。入居者の生活の安定、業界の健全育成のためには、事業の特殊性や事業リスクの検討、入居者保護と公平な競争を促す安定的な制度設計が不可欠だったのですが、『介護付だ、高専賃だ、サ高住だ』と制度が次々と変更され、制度間の歪を無視したままで補助金や税制優遇などが行われ、勢いだけでここまで来てしまいました。

しかし、多くの人が感じているように、この高齢者住宅バブルは、必ず崩壊します。
入居一時金経営の『長期入居リスク』の顕在化による有料老人ホーム倒産に加え、現在のサ高住の入居率・商品性を見ても、そのままで経営が継続できるとはとても思えません。倒産だけでなく、入居者の要介護度の変化による介護事故や認知症トラブルが激増することになるでしょう。その多くが、資金やノウハウの乏しい事業者が経営していることを考えると、突然のサービス停止や倒産によって行き場のない高齢者の増加し、大きな社会問題となることは避けられないでしょう。

しかし、『高齢者住宅』はビジネスとして成立しないのかと言えばそうではありません。
莫大な社会保障費のかかる特養ホームからの脱却、団塊世代の後期高齢化、独居高齢世帯の増加、介護保険財政の効率運用など、あらゆる面から要介護高齢者を対象とした高齢者住宅の育成は不可欠です。逆に、高齢者住宅に新規参入する事業者にとっては、制度の方向性や事業リスクが見えてきた、これからが大きなビジネスチャンスなのです。

ただ、これまでと同じような視点で参入すると、『失敗ケースの二番煎じ』になりかねません。
今後参入する事業者の最大の強みは、これまでの10年間で、成功ケースと失敗ケースの検証が進んでいるということです。これから、高齢者住宅に参入する事業者に必要な3つのポイントを挙げます。

【リスクマネジメント】
ひとつはリスクマネジメントの視点です。
介護施設や高齢者住宅のリスクマネジメントと言えば、介護事故・トラブルの削減・対応を表すことが多いようですが、私は、介護施設や高齢者住宅の長期安定経営を阻害する、特殊な事業リスクをどのように削減・管理するのかという経営全般にかかる言葉として使っています。

高齢者住宅経営が安定しないということは、事業リスクに対応できていないということと同意です。また、高齢者住宅の経営を阻害する様々なリスクの大半は、その商品性に起因しています。失敗ケースを精査する中で、安定経営を阻害するリスクにはどのようなものがあるのか、それはどのように関連しているのかがわかってきました。

一部のサ高住事業者からは、『要介護高齢者の増加が不安だ』と言う声を聞きますが、それは『介護が必要になっても安心』とセールスしている一方で、商品設計上・サービス設計上、『入居者が要介護状態になったらどうするか』が十分に検討されていないということです。言うまでもありませんが、介護保険は、高齢者住宅での必要十分な介護サービスを約束しているわけではありませんし、介護保険だけで、重度要介護高齢者の増加に対応することは不可能です。重度化対応ができなければ、介護事故やトラブル、クレームが急増し、裁判の増加、スタッフの大量離職、入居者の退居などで、事業の継続ができなくなります。

高齢者住宅の需要が増えることは間違いないのですから、その経営は、いかにリスクを想定・削減・管理するか・・つまり『リスクマネジメント』がすべてだと言っても過言ではありません。それは、重度化対応リスクだけでなく、スタッフ募集リスク、入居者募集リスク、制度変更リスク、長期入居リスク、人件費高騰リスクなど、経営上のリスク、サービス提供上のリスクすべてに言えることです。現在経営が安定しているように見えている事業者でも、商品・システムとして、様々なリスクに対応できなければ、経営はどこかで必ず行き詰ります。10年後の業界図は大きく変わっているはずです。言い換えれば、『商品としてのリスク』を回避できれば、需要は高くなる将来性の高いビジネスなのですから、事業成功の可能性は確実に高くなるのです。

【競争力の高い商品】
二つ目は、競争力の高い商品です。
『高齢者住宅の需要は高まる』『これからはサ高住の時代だ』と勢い込んで参入したものの、入居率が上がらず『こんなはずではなかった』 と頭を抱えている人は少なくありません。『サ高住はまだ一年なので、消費者の間で十分に認識されていないことが原因だ』と分析するむきもあるようですが、それは違うだろうと思います。理由はとても簡単で、全く商品として魅力がないからです。少し厳しいかもしれませんが、バリアフリーの住宅に介護サービスを付けるだけで、長期安定的に経営ができるなんて、あまりにも考えが甘いのです。

そもそも、元気な高齢者を対象とした高齢者住宅には、それほどの需要はありません。それは、特養ホームの待機者数とケアハウスの待機者数を比較すればわかるはずです。
述べたように、これからは有料老人ホームもサ高住も、介護付も住宅型もなくなります。今は、あれもこれも『安心・快適』『介護が必要になっても安心』 と標榜されていますが、トラブルや事故、倒産が増えると、経営の安定度はどうか、実際のサービス内容は・・と入居者・家族が高齢者住宅を見る目は養われてきますし、厳しくなります。

民間の高齢者住宅で必要最低限の機能は、『重度要介護状態になっても生活できる』ということです。
その上で、質の高い、安定したサービスを、いかに安い費用で提供できるかが勝負の要です。
現在は、高齢者住宅の相場というものがありませんが、入居者・家族の厳しい目の中で、一般賃貸住宅・サービスと同様に、『信頼できる事業者だ』『サービス内容の割に低価格』 と判断され、いま以上に、人気・不人気がはっきりわかれてくるでしょう。

競争力の高い商品を作るために高住経ネットが進めているのは、『介護の効率性』『説明力』『ディスクロージャー』の3つです。建物・設備の工夫、介護動線・介護動線の工夫によって、どうすれば少ない介護スタッフで手厚い介護サービスが提供できるかの検討を進めています。それは『生活しやすさ、介護しやすさ』から介護事故の削減予防、人件費の削減による低価格化、スタッフの労働条件改善など経営の根幹となるものです。また、これまでのような『安心・快適』といった美辞麗句ではなく、入居者・家族の厳しい目に応対できるように、当該高齢者住宅の工夫やメリットだけでなく、入居後のリスクを含めた説明力を強化しなければなりません。

【経営管理・サービス管理】
もう一つは、経営管理・サービス管理ノウハウの構築です。

高齢者住宅は入居率が高くなれば経営が安定すると考えている人が多いのですが、それは大きな間違いです。『入居率アップセミナー』などが行われていますが、下手に入居率を上げるとその他のリスクが高くなり、より経営改善が難しくなるケースは少なくありません。入居率が高くなれば経営が安定するわけではなく、総合的にリスクが管理できなければ、必ず経営は破たんします。重度化対応リスク、長期入居リスクなどはその典型例です。実際、『入居率が高いのに収支が安定しない』と言う相談は増えていますし、逆に『無理に入居率を上げなければ、抜本的な改善ができたのに・・』というケースもあります。

高齢者住宅は、『売れば終わり』というものでなく、契約後にサービスがスタートします。
リスクを適正に管理するためには、経営管理ノウハウ・サービス管理ノウハウが不可欠です。
介護事故やトラブル、クレームに管理者・経営者が対応できないために、裁判となり数千万円の損害賠償を求められるケース、クレームが原因でスタッフが離職するケースが急増しています。学校や病院では、モンスターペアレンツ、モンスターペイシェントなどが社会問題化していますが、同じ波が必ず高齢者住宅・介護施設にもやってきます。

長期安定経営のためには、入居者確保だけでなく、スタッフの労務管理や制度の方向性の理解、長期・中期・短期的な事業計画の策定などの経営管理ノウハウ、更に、入居相談入居説明、事故クレーム削減、事故クレーム対応、スタッフ教育などのサービス管理ノウハウが不可欠です。これら、高齢者住宅開設後に、追々検討するものではなく、事業計画の中で事業が開始される前に検討しておくべきものです。





ここまで、『有料老人ホームとサ高住の未来』『高齢者住宅に適用される介護報酬の未来』『高齢者住宅の居住権の未来』 そして、『高齢者住宅の商品性の未来』について、10回にわたって述べました。

現在の有料老人ホームに対する入居一時金の締め付けを見てもわかるように、有料老人ホームとサ高住の違いを小さくして、名称としてはサ高住に統合されると思いますが、それは有料老人ホームもサ高住もない、本格的な高齢者住宅、競争の時代がスタートするということです。

事業成功のためには、制度ではなく商品性の勝負であるということ、開設ではなく経営に視点を置くということ、そして需要ではなく事業性を理解するということが必要です。
今後、これまでの失敗を反面教師にして、競争力の高い高齢者住宅商品、リスクに強い高齢者住宅が次々と開設されていきます。厳しい競争の時代は、これからの参入する事業者にとっては、大きなチャンスでもあるのです。



【関連コラム】
    サ高住の課題と未来 ①
    サ高住の課題と未来 ② ~入居者保護 Ⅰ~
    サ高住の課題と未来 ③ ~入居者保護 Ⅱ~
    サ高住の課題と未来 ④ ~介護保険 Ⅰ~
    サ高住の課題と未来 ⑤ ~介護保険 Ⅱ~
    サ高住の課題と未来 ⑥ ~介護保険 Ⅲ~
    サ高住の課題と未来 ⑦ ~居住権 Ⅰ~ 
    サ高住の課題と未来 ⑧ ~居住権 Ⅱ~
    サ高住の課題と未来 ⑨ ~商品性 Ⅰ~
    サ高住の課題と未来 ⑩ ~商品性 Ⅱ






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