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『こいも』 日々思うあれこれ

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サ高住の課題と未来 ⑨ ~商品性Ⅰ~ 


ここまで8回にわたって、サ高住という制度の課題とその未来について述べてきました。
お読みいただければわかるように、私は有料老人ホームという制度を推奨しているわけではありませんし、サ高住を作るなと言っているわけでもありません。

サ高住の課題は、介護保険の適用を含め制度に矛盾が多く安定的なものではないということ、加えて、その不安定な制度をベースにして、更に不安定な『サ高住モデル』という商品を作られているということです。

いまでも、『サ高住の開設のポイント』 『補助金確保の実務』 といったセミナーが盛んに行われていますが、大切なのは開設することではなく長期安定的に経営を継続することです。そのためには参入メリットではなく、事業の特殊性を理解し、リスクマネジメントを基礎とした事業計画を策定しなければなりません。残念ながら、事業リスクという視点で見れば、国交省がセミナーなどで公開している『サ高住モデル』は、長期安定的な高齢者住宅のビジネスモデルではありません。

ここでは、いまのサ高住モデルには何が欠けているのか、二つの視点から開設します。


【曖昧なターゲット】
ひとつは、曖昧なターゲットです。
自立・要支援高齢者と要介護高齢者では生活ニーズが違いますから、自立・要支援高齢者を対象とした高齢者住宅と、要介護高齢者を対象とした高齢者住宅では、サービス設計・商品性が変わります。それは大学と幼稚園では建物設備、カリキュラム、サービスが違うのと同じです。自立高齢者も要介護高齢者も一緒に生活するというのは、大学生も幼稚園生も一緒に勉強すると言っているのと同じです。

これは、『早めの住み替えニーズ』と呼ばれるものも同じです。
新規参入事業者の方からは、
 『最初は手のかからない元気高齢者・要支援高齢者を対象として、スタートさせたい』
という相談が多いのですが、介護の手がかからないということと、経営しやすい、事業として安定するということは基本的には全く違います。『早めの住み替えニーズ』の高齢者住宅は、元気な高齢者の生活ニーズと要介護高齢者の生活ニーズを両方満たす必要がありますから、要介護高齢者を対象とした高齢者住宅とは比較にならないほど難しいのです。自立高齢者を対象とした高齢者住宅は、要介護状態になれば退居してもらいますという『健康型有料老人ホーム』が正しいのですが、借家権のサ高住ではその契約はできませんし、また入居者も集まらないでしょう。

サ高住モデルの中では、要介護高齢者と自立高齢者が混在し、元気な高齢者が車いすの高齢者を押すといった優しいイメージで語られています。しかし、ビジネスとしてみれば、個々に変化する要介護度・ニーズを想定することはできませんし、認知症トラブル、人間関係トラブルも多発します。
高齢者住宅への入居を希望する高齢者・家族の基本ニーズが、『要介護高齢者になったときのための安心』であるとすれば、高齢者住宅ビジネスのターゲットは、『要介護高齢者専用』でしかありえないのです。それは、現在の養護老人ホームやケアハウスが、単独で成立していないことを見れば明らかです。


【事業性を無視した低価格化】
もう一つの課題は、事業性を無視した低価格化です。
サ高住のビジネスモデルは、何故か始めから低価格が義務付けられているように、『一時金ゼロ、月額費用15万円程度(介護保険一割負担除く)』というものが多いようです。
確かに、行政とすれば富裕層を対象としたものではなく、中間層を対象とした年金程度の費用で入居できる高齢者住宅を増やしたいという意識があるでしょうし、事業者としても、中間層を対象とすればターゲットは広がります。ただ、考えなければならないのは、15万円+介護保険の一割負担程度で、要介護高齢者・重度要介護高齢者を対象とした高齢者住宅の設計が可能なのか・・・です。

その答えは議論するまでもありません。
多くの人が比較するのが、人気の高い『特養ホーム』です。
民間の高齢者住宅でも、その費用(13万円程度)に少しでも近いものにすれば、入居者は集まるはずだ・・というご相談・事業計画は少なくありません。。
確かに、入居者は集まるでしょう。しかし、介護付有料老人ホーム(特定施設)と比較すると、特養ホームに投入されている社会保障費は、年間一人当たり150万円も多いのです。更に、社会福祉法人は非課税ですし、入居率はほぼ100%です。サ高住などの民間の高齢者住宅で、重度要介護高齢者にも対応できる同じ商品を作ろうとすれば、月額費用は30万円、入居率を80%程度に設定すれば、40万円は必要になります。
これは、サ高住でも同じです。無理にスタッフの人件費を抑えて、区分支給限度額方式で全額利用してもらって・・・と、事業者の都合だけで無理やり収支計画を合わせても、それはビジネスとしては成り立たないのです。

高齢者住宅の原価は、【人件費】【建物設備】【食費その他サービス】です。
特養ホームの基準ではなく、介護動線や生活動線を工夫することで、効率的に介護サービスを提供したり、一棟借りなどで建築費を抑制することはできますが、それでも限界はあります。大量購入で原価を抑えられるような種類のものではありませんし、薄利多売が可能なビジネス形態でもありません。要介護高齢者の生活を支えるために、建物・設備・介護サービス費用、食費などの原価計算をし、その内介護保険でどれだけカバーできるのかを考えると、ある程度の自己負担は必ず必要になるのです。


この【ターゲット】【低価格】の二つの課題はリンクしています。
現在のサ高住モデルは、元気な高齢者も要介護高齢者も、家賃・食費・管理費だけで15万円程度。介護サービスは介護保険にお任せというビジネスモデルです。しかし、そもそも、介護保険内のサービスだけで要介護高齢者の生活を支えることはできませんし、自宅と同レベルの介護サービス、同程度の安心なのであれば、高齢者住宅に入居する意味はありません。また、介護の手厚さ、介護システムに関わらず、事業者として求められるリスクマネジメントのレベル、安全配慮義務は変わりません。『スタッフ配置が少ないから転倒・骨折しても仕方ない』『月額費用が安いから責任を免れる』ということにはならないのです。

更に、述べてきたように高齢者住宅に対する区分支給限度額方式は、早晩必ず抑制されます。現在の入居者に対する経過措置が行われるとしても、価格帯は大きく値上げせざるを得ないでしょう。その金額は小さなものではありませんし、ターゲットとしてもサービスとしても、非常に中途半端です。月額費用20万円、25万円のものに元気な高齢者は入居しませんし、そのサービス内容は重度要介護高齢者にも対応できないものです。

厳しい言い方をすれば、サ高住モデルの価格設定は、建築基準法の規定がないままに、『どうすれば建築費用を安くあげられるか』だけで設定されたようなものです。多くの人が勘違いされていますが、そもそも低所得者対策は、営利事業を行う民間ビジネスの仕事ではありません。私財をなげうって、地域のために公立中学と同程度の授業料で私立中学を作る・・・というのは篤志家・ボランティアの発想としては素晴らしいと思いますが、それは長期安定的なビジネスとしては、成立しないのです。

【関連コラム】
    サ高住の課題と未来 ①
    サ高住の課題と未来 ② ~入居者保護 Ⅰ~
    サ高住の課題と未来 ③ ~入居者保護 Ⅱ~
    サ高住の課題と未来 ④ ~介護保険 Ⅰ~
    サ高住の課題と未来 ⑤ ~介護保険 Ⅱ~
    サ高住の課題と未来 ⑥ ~介護保険 Ⅲ~
    サ高住の課題と未来 ⑦ ~居住権 Ⅰ~ 
    サ高住の課題と未来 ⑧ ~居住権 Ⅱ~
    サ高住の課題と未来 ⑨ ~商品性 Ⅰ~
    サ高住の課題と未来 ⑩ ~商品性 Ⅱ



category: サ高住の課題と未来

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