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『こいも』 日々思うあれこれ

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入居一時金と利用権⑨ ~利用権の未来~   


入居一時金制度の課題は、『家賃相当の利用料を一時金で購入する』 という価格設定の特殊性だけでなく、その根本は、一般の住宅とは呼べない 『利用権』 という居住権にある。

厚労省と国交省は、目的の違う有料老人ホームと高専賃の2つの制度を、『高齢者住宅の健全育成』 のもとサ高住として統合させようとしたが、その実、省庁のご都合主義の目先の補助金確保のためであったことはバレバレで、再登録・統合は全く進まず、業界は大混乱てしている。

しかし、現在の有料老人ホーム・高専賃という2つの制度が両立することによる欠陥は大きく、その歪の中で無届施設が増加しているのも事実であり、高齢者住宅の健全な育成、入居者保護の観点から両制度の早期の統合は不可欠だ。現在のような補助金や利権を引き出すための表面的な制度統合ではなく、早期に中身の統合を粛々と進めていかなければならない。

その中心となるのが、居住権の統合だ。
高齢者住宅と福祉施設の最大の違いは、『個人の住宅』か否かだ。
高齢者住宅にかかる居住権がどうあるべきか・・という根本的な課題を一から見直す必要がある。言いかえれば、有料老人ホームに適用されている『利用権』 と、高専賃・サ高住などの『借家権』 をどのように統一していくのか、という課題を抜きにして、制度の統合はありえないのだ。

この2つの居住権の課題については、入居一時金と利用権④ の中で述べている。
有料老人ホームの利用権は、福祉施設である特養ホームの居住権と同じレベルの権利だと言って良い。契約上の権利であるため、事業者によって権利の内容は違い、事業者の判断によって退居を求められることもある。個人の住居として安定した権利ではない。この不安定な利用権を、高額な一時金で購入させるのだから、トラブルが発生しない方がおかしい。

これに対して、賃貸借契約に基づく借家権は、借地借家法に基づいた法的に強い権利だが、高齢者・要介護高齢者の居住権としては強すぎる。認知症の周辺症状によって他の入居者の生活が脅かされるような事態になっても、事業者から契約を解除することはできない。部屋から悪臭がする、寝タバコなどの問題が発生しても、居住者の許可なく居室に入ることはできない。

利用権・借家権共に、高齢者住宅の居住権としては相応しくない。
一般の賃貸マンションにおいて 『高齢者お断り』 となっているのはそれなりに理由があるのだが、その根本的な課題を解決しないまま、そのリスクを理解しないまま、『高齢者住宅だ、サ高住だ・・』 『高齢者住宅は利益がてる』 と多くの事業者は勢い込んで参入している。サ高住や高専賃の多くが、自立~軽度要介護高齢者を対象としていることを考えると、今後、加齢によって要介護度が重度化、認知症が発生してきた場合、大きなトラブルとなることは避けられない。

国交省は、高齢者を対象として、『高齢者の居住の安全確保に関する法律』 の中で、終身建物賃貸借契約というものを新しい権利としてスタートさせているが、借家権でも終身利用の入居一時金の支払いを可能にするために作られたような権利で、居住権の強さとは全く違うところで議論されたものだ。その上、都道府県知事の認可が必要となるために、ほとんど活用されていない。


では、この利用権と借家権の統合は、どのように、どのラインで行われるのだろうか。
その未来を予測してみる。

一つは、利用権の居住権を強化するための法制化だ。
述べたように、利用権は契約上の権利で、事業者によって権利の内容が違う。文言が同じでも、実際にはその事業者の認知症トラブルへの対応力や介護システムによっても変わってくる。現状は、入居者から見れば、住宅の居住権と呼べないほどの弱い、曖昧な権利なのだが、ガイドラインの設定や法制化によって、一定の権利基準が定められることになる。

強化のポイントは、『事業者からの契約解除』 だ。
事業者からの解除要件、手順 (方法・期間、抗弁の機会)、解除までの応対記録、苦情申し立て機関などについて厳しく定められ、事前に重要事項説明書によって、詳細に説明が求められることになる。解除要件については、事業者の主観的なものではなく、客観的な基準が定められ、事業者の言い分だけで退居させることはできなくなる。

ただ、高齢者住宅の特殊性を考えると、借家権と同じではなく『他の入居者の生活や生命に影響を及ぼすケース』 で、かつ 『事前説明、事業者の努力、一定の猶予期間、抗弁の機会』 などいくつかの要件を満たせば、事業者からの契約解除の権利は残るだろうと考えている。

現在の有料老人ホームの利用権は、この『新利用権(仮称)』に引き継がれ、高齢者住宅の居住権の一つの基準となるだろう。そして、新しく作られる、高齢者住宅 (有料老人ホーム・サ高住などの制度が残っているのか否かに関わらず) は、この新利用権という居住権で運営されることになる。

もうひとつのポイントは、現在の高専賃・サ高住の借家権の取り扱いだ。
現在の有料老人ホームの利用権が、事業者により厳しい 『新利用権』 に移行することは問題ない。居住者にとってメリットとなるからだ。しかし、借家権は 『物権化している』 と言われるほど入居者に強い権利であり、新利用権になれば、現入居者の権利が毀損されることになる。入居者とサ高住・高専賃との個別契約のため、制度変更に基づいて自動的に移行という訳にはいかない。現在の入居者に対しては、個別の説明・契約変更が必要になるだろう。



ここまで9回に渡って、入居一時金と利用権の問題について述べてきた。
この居住権は、高齢者住宅の制度設計の根幹とも言えるもので、大混乱している入居者保護施策や、2つの制度統合の中心課題でもある。入居一時金トラブルを表面的にとらえ、小手先の改定だけを行っても、根本的には何も変わらず、業界や入居者を混乱させるだけだ。

過激なことを好んで言いたいわけではないが、厚労省・国交省ともに、高齢者住宅事業の未来や入居者保護など何の興味もなく、社会保障制度・高齢者住宅育成を自己の利権拡大・補助金搾取の種に使ってきたに過ぎないことは明らかだ。高齢者住宅の制度設計は、厚労省・国交省の綱引きでそこが抜けたようになっており、利権の奪い合いから最近は責任の押し付け合いのようになっている。

今後、有料老人ホームの倒産やトラブル、無届施設での虐待事件・人権侵害など、高齢者住宅に関する様々な課題が表面化していくだろうが、その責任の半分以上は、厚労省・国交省にあると考えている。
お題目ではなく、高齢者住宅の健全育成が本当に必要だと考えているのであれば、根本的な課題はどこにあるのか、どのポイントを修正すべきか、真剣に考えてほしいと、心から思う。


category: 入居一時金と利用権 課題と未来

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